夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜
「あなた……、誰?」
「え?」
「私はカズサじゃないわよ? 誰かと人違いしてるんじゃない?」
「……??」
何が起こっているのか理解できず、私は茫然とした。
困惑の笑みで通り過ぎる彼女は、至ってまともで、演技をしている風ではなかった。
どうなってるの? 和沙が和沙じゃなくなってるなんて……。
そのまま会社を出た私は、当てもなく歩き始めた。
昨日まで私の知っている世界が、今日になって様変わりしている。パスケースに社員証はないし、同僚が見知らぬ人に変わっている。
私だけが社会から一人、切り離されたみたいな……。
「……涼ちゃん」
言いようのない喪失感に駆られ、鞄の中から慌ててスマホを取り出した。
電話のマークをタップし、急いで彼に電話を掛ける。プルルルル、と規則的に鳴るコール音を何度も耳に流すが、私の大好きなあの声には繋がらない。
そんな。どうしよう……。
「涼ちゃんにまで知らんぷりされたら、私……っ」
待ち受けにした彼の写真を見つめながら、私は決心した。
こうなったら直接会いに行こう。会社には行けなくなったから時間はたっぷりある。