夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜
第四夜
目の前に伸びた足跡を見つめ、ごくりと何かを飲み下す。
この際、いつ眠りに就いたかなんて疑問は後回しだ。私は妙に気になって仕方ないこの跡を辿り、正体を見極めなければいけない。
ーー「水瀬は自分の思うままに歩けばいいんだ」
さっきまでそばにいた彼の言葉が胸に響いた。
私は諦めずに歩みを進めた。
水平線も見えない白い世界で、終わりの見えない足跡は、しかしながら予期せぬ早さで私をゴールへと誘った。
白砂にできた足跡の先に、誰か人らしき物体が倒れていた。高校生と分かる制服を着ていて、長い髪を二つに分けて結んでいる。
……っあ。
顔が見える位置まで近づいて、立ち止まる。私は息を呑んだ。
「"私"、だ」
白砂に倒れたもう一人の私は、頭から血を流していた。
そうと理解した瞬間、倒れた私の周りから次々と風景が浮かび上がった。白い世界を沢山の色で埋め、あっという間に学校の校庭へと様変わりする。
足元に野球の硬球が転がってきて、素足に当たった。
「水瀬っ!!」
大好きな声が鼓膜を打った。
振り返ると、高校生の涼ちゃんが血相を変えて駆けて来る途中だった。