夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜
夢か現か
重い瞼をこじ開けるように開いた。
私は仰向けに寝ていて、ぼんやりと白い天井を見ていた。
少しだけ上げられたベッドのリクライニング。頭の傍で鳴る電子音や上から吊られた点滴のパックを見て、どうやらここは病院らしいと理解する。
心に溜まった澱を吐き出すように深く息を吸って吐き出した。
そういう事か。
右手を持ち上げて頭に触れると、包帯らしきものが巻かれていると分かる。
私は、"夢を見ていた"。どのくらいの時間眠っていたのかは分からないが、きっと何日にも渡って幸せな夢を見ていたんだ。
目覚めてしまえばなんて事はない。
危機的状況には追い詰められたが、社会で働き、かっこいい彼氏がいる"大人の私"は、私が無意識下で作り出したただの夢物語。
涼ちゃんと呼んでいた彼氏像は、私の理想を具現化したもので現実とはほど遠い。
涼ちゃん、つまり真柴涼介くんは、現実世界においてただ見つめる事しかできない片思いのキミ。
不意にコンコン、とノック音がする。
お母さん、かな……?
声を出せずに部屋の後方に目を向けていると、静かに病室の戸が開けられた。