夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜
ベーグルを食べながら映画の感想を満足に語り合い、私はふと今朝見た夢を思い出した。
「そういえばね、今日変な夢見たの」
「夢?」
「そう」
テレビの砂嵐に英文が浮かんだ事と、真っ白な砂浜に突然足跡が浮かび上がり、それを辿った話をすると、涼ちゃんは「へぇ」と感心したような相槌を打った。
「よくそんなに覚えてんね? 俺なんか目覚めた瞬間に忘れてるわ」
「それが感想〜?」
「あはは、悪い悪い」
頬を膨らませてひと睨みすると、涼ちゃんは悪びれなく笑う。
「ねぇ、涼ちゃん」
「うん?」
「私たち、付き合ってもう五年だよね」
「おお。もうそんなになるんだ……」
涼ちゃんはお皿に残ったご飯をかき集め、最後のひと口を食べる。
「告白したの、私からだったよね?」
自信がないので小首を傾げて尋ねると、彼は幾らか眉を寄せる。
「俺からだよ」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
私にとってはとても大事なワンシーンのはずなのに、記憶は曖昧で朧げだ。
「次の休みの日、五周年のお祝いしよう」
そう言って目を細めて笑う彼の笑みに、じわりと胸が熱くなった。