夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜

 ベーグルを食べながら映画の感想を満足に語り合い、私はふと今朝見た夢を思い出した。

「そういえばね、今日変な夢見たの」

「夢?」

「そう」

 テレビの砂嵐に英文が浮かんだ事と、真っ白な砂浜に突然足跡が浮かび上がり、それを辿った話をすると、涼ちゃんは「へぇ」と感心したような相槌を打った。

「よくそんなに覚えてんね? 俺なんか目覚めた瞬間に忘れてるわ」

「それが感想〜?」

「あはは、悪い悪い」

 頬を膨らませてひと睨みすると、涼ちゃんは悪びれなく笑う。

「ねぇ、涼ちゃん」

「うん?」

「私たち、付き合ってもう五年だよね」

「おお。もうそんなになるんだ……」

 涼ちゃんはお皿に残ったご飯をかき集め、最後のひと口を食べる。

「告白したの、私からだったよね?」

 自信がないので小首を傾げて尋ねると、彼は幾らか眉を寄せる。

「俺からだよ」

「そうだっけ?」

「そうだよ」

 私にとってはとても大事なワンシーンのはずなのに、記憶は曖昧で朧げだ。

「次の休みの日、五周年のお祝いしよう」

 そう言って目を細めて笑う彼の笑みに、じわりと胸が熱くなった。

< 4 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop