夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜
その時、どこか水溜まりにでもはまって濡れたのであろう、男の子の靴がコンクリートの地面に跡を付けていて、私は今朝も見た夢の内容を思い出す。
「ねぇ、和沙。同じ夢を立て続けに見た事ってある?」
「え、夢?」
「そう、夢」
私は昨日と同じく、今朝も足跡を辿る夢を見ていた。それを和沙に話す。
「気になるんだったら、試しに無料の夢占いでもしてみたら? スマホで簡単に検索できるし」
夢占いか。
「そうだね。やってみる」
鞄から出したスマホでインターネットに繋ぎ、検索を掛けると、気になるタイトルの記事が目に飛び込んでくる。
誰かの足跡の上を歩く夢、という内容を読み、上を歩いていたわけじゃないんだけど、と思いつつ文章に目を通した。
「どんな感じ?」と和沙が私のスマホを覗き込む。
うーん、と私は首を捻った。
「"夢で、誰かの足跡の上を歩いていたら、あなたの個性がなくなるサイン"……だって」
正直なところ、いまいちピンとこない。
「ま、夢だしね」
そう言って私の肩にポンと手を置くと、和沙が立ち上がった。彼女に倣って私もベンチから離れた。
会社のエントランスをくぐる頃、「凜」と名前を呼ばれて振り返る。