夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜
「涼介さんとの結婚、決まったら真っ先に教えてね!」
「ん、勿論」
ピンク色のパスケースに収まった会社のIDカードを振り、私は笑みを浮かべた。
*
最寄駅で電車を降りた時、鞄の中のスマホがヴヴ、と震えた。確認すると涼ちゃんからのメッセージだ。
『今週の日曜、どこか行きたいところある? 候補が無ければ俺の方で探しておくけど』
行きたいところ、かぁ。
スマホを見つめながら、ホームの中ほどで足を止める。
まだ和沙に相談もしていないし、取り立てて行きたい場所があるわけでもないので、私は彼に任せる事にした。
『特に行きたいところも思い付かないし、涼ちゃんにお任せしてもいいかな?』
メッセージを打ち込んで送信すると、直ぐに既読が付き、承知しました、と得意そうに笑うパンダのスタンプが返ってくる。
それが可愛くてクスッと笑みを浮かべてしまう。
五周年、だもんねぇ。どこか素敵なレストランで食事、なんてのもいいかもしれない。
週末に思いを馳せると楽しみでたまらなくなり、顔がゆるむ。
ふふ、と口角を上げて、私はスマホを手にまた歩き出す。
あれ? でも……。
ふと頭に浮かんだ疑問に私は首を傾げた。