夢幻界〜Welcome to the world of dreams.〜
第三夜
白いワンピースを翻し、私は誰が付けたかも分からない足跡を辿っていた。
真っ白な世界にただ一人。歩きながら思った。まだ正体には辿り着かない、と。
無心に足を進めていると、突如として目の前が明るくなる。
細く目を開けると見慣れた天井が広がっていた。窓から差し込む陽の光に一旦瞼を閉じる。
また同じ夢だ。
「何か意味でもあるのかな」
布団から起き出し、会社へ行くために朝の準備を済ませて家を出る。
今朝起きた時にも確認したが、ゆうべ送ったメッセージにはまだ返事が届いていない。
涼ちゃん、どうしたんだろう? 大事な記念日なのに、忘れてしまったから怒ってるのかな……。
重いため息を落としつつ、私は最寄駅へ歩みを進めた。
会社のエントランスをくぐり抜け、ピンク色のパスケースを掴む。
社員用のIDカードで入退場ゲートを通り抜けようとすると、不意に警備員さんに声を掛けられた。
「すみません、ちょっと良いですか?」
「……え? あ、はい」
警備の人に声を掛けられるなんて普段無い事なので、何ですか、と身構えてしまう。