【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



「はい。そこには、小田原さんのものと思われるイニシャルと。……桃原奈都さん、あなたのものと思われる名前のイニシャルが刻み込んでありました」

「……え?」

 奏人のイニシャルと、わたしのイニシャルが?その結婚指輪に?……信じられない。ウソみたいだ。まさかそんなことが……。

「真実は分かりませんが、きっと小田原さんは、あなたにプロポーズをしようとしていたんだと思います。それでその途中、何かしらの事故に遭い、亡くなってしまったんだと、わたしたちは考えています。……あなたに何も言わずに突然いなくなったのも、きっとサプライズでプロポーズをしようとしていたか何かだと、思っています」

「……そうですか。わざわざご連絡頂き、ありがとうございます」

 10年経って彼が亡くなったことを知った今、どんな気持ちなのか自分でも分からない。……だけどその真実を知れた今、少しだけど、心の中にある小さな扉が開かれたような気がしたのは確かだった。

 奏人は死んだ。あの日、彼は亡くなったんだ。
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