【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜


 
 これでもう、わたしを苦しめるたった一つの心のモヤモヤはなくなった。たった一つ、今までずっと消えなかった後悔が、ようやく今日開放されたんだ……。

「今回のことをお話するかどうか、迷ったのですが、小田原さんのご家族はすでに亡くなっているようでしたので……。親しい関係にあったあなたに、ご連絡させて頂きました」

「……はい。ありがとうございました」

 心の奥にずっと引っかかっていた彼の存在は、決して忘れることはできないかも知れないとずっと思っていた。だけどこれで、わたしは彼からようやく開放された。……もう迷うことなんてない。もう彼のことで悩むことなんてないんだ。

 咲哉さんのことを愛しているし、これからもずっと夫婦として、家族として、ずっと大切にしつていきたいという気持ちはこれからも何一つ変わらない。

 だけどこうやって心の奥にずっと忘れられない人がいることに、時々罪悪感を覚えていた。前を向いて生きていくことが出来るようになったけれど、頭の片隅にはずっと奏人のことが焼き付いていた。
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