【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜
「これからも、社長として精進して参ります。皆様、どうか力を貸してください。 よろしくお願いします」
五月女と名乗るその彼は、気がついたら挨拶を終えていて。社内から拍手が起きていた。
「ねぇ、奈都! 五月女社長、カッコイイよね!?」
と、親友の藍那は少し興奮気味でそう言っていた。
「……え?」
「何? 聞いてなかったの?もう〜」
「……あ、ごめん」
わたしの心は気が気じゃなかった。目の前にいた彼が、本当にあの日失踪した彼なのかどうか分からないけど。……そんな気もしたし、そうじゃない気もした。
3年経った今、もう忘れたいと心のどこかで思っていたのに……。まさかこんなことになるなんて、思ってもいなかった。
「奈都、お疲れ様」
「……あ、うん。お疲れ様」
その日の夕方、仕事を終えて帰宅したわたしは、冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを取り出し、それを一口飲んだ。 そしてゆっくりと、深呼吸をした。