【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜
「じゃあ俺も、奈都って呼ばせてもらおうかな」
「え……」
何?なんで? なんでわたしに、そんなこと言うの……?
社長の考えていることはまるで分からない。何がしたいのか。……あなたは、わたしのことをからかっているだけなの?
そんなことを考えると、何も言えなかった。
「奈都、奏人のことまだ忘れられない?」
だけど五月女社長は、さらにそう聞いてきた。
「……忘れられる訳、ないです。あんなにも、あんなにも……愛した人だから」
あんなにも愛していた人を、忘れられる訳がない。わたしはずっと、奏人のことだけ想っている。奏人がもし生きているなら、どこかでまた会いたいって、ずっと思っていた。
だけどこうやって目の前に、奏人と同じ顔の人が突然現れて、どう見たって奏人にしか見えなくて……。忘れたくても……あなたのせいで、あなたのせいでわたしは、その奏人という呪縛から逃れられないんだ。それも全部、あなたが現れたせい。あなたが悪いの。……あなたさえ、現れなければ。