【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



「……もしあなたが奏人だったら、奏人はわたしを覚えているはずです。恋人の顔を忘れることなんて、絶対にあり得ないです。……なのにあなたは、わたしを覚えていない所か、わたしに対して初めましてって言ったんです」

「…………」

「わたし、ようやく奏人が帰ってきたんじゃないかって思って、すごく嬉しかったんです。やっと会えた、生きてて良かったって。……なのになぜかあなたは、顔は同じなのに別人だった。名前も違くて……。どういうことなのか、分からなかったです」

 わたしはそう言うと、ソファから立ち上がった。社長はわたしをずっと見つめていた。

「……五月女社長、わたしは同情なんてされたくありません。 もしも同情されるくらいなら……あなたに嫌われた方がマシです」

 わたしがそう言うと、五月女社長は立ち上がってわたしをそっと抱きしめていた。

「辛いのにそんなに強がらなくていい。 俺が君のことを知りたいのは、本当だ。……同情なんかじゃないよ」

 そして彼は、わたしに優しくそう言った。
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