【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



「……なんで」

 俺を利用すればいいなんて……。なんでそんなこと言うの?どうして……。

 五月女社長の考えも、その言葉も、全然分からない。なんでそんなふうに、わたしに言うのか。……全然、分からない。

 考えただけで胸が苦しくなって。なぜか不思議と、涙が出た。

「……奈都、泣くな」

 五月女社長は、わたしの頬に流れる涙を優しく拭ってくれた。

「……っ、しゃ、ちょ……」

「奈都は幸せになっていいんだ。奏人のことを思うことだって、悪いことじゃないさ。だって奈都が本当に愛した男なんだろ?……奈都は幸せになる権利がある。俺が保証する」

 涙で滲んだその目は、わたしの心を溶かしてくれた気がした。

「……ありがとうございます」

 そう言ってもらえただけで、心が優しくなった。目の前にいるのは、奏人と同じ顔をした五月女社長。性格も、名前も違う別人だ。

 だけどわたしには、奏人がそう言ってくれている気がして。彼を奏人だと錯覚しそうだった。
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