【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜
いつもなら食べられる朝ご飯も、今日に限って喉を通らなかった。飲めたのは豆乳だけ。
朝から虚しい気持ちになったまま、わたしは仕事へと向かった。
「おはよう、奈都」
「…………」
「……奈都?」
「…………。え? あ、ごめん……」
わたしは藍那がおはようと言ってくれていることに気付かなかった。藍那はすごく心配そうに、わたしを見ていた。
「奈都……どうしたの?」
「……え?」
「昨日から奈都、なんか変だよ?」
そう藍那に言われて、ハッとした。昨日からずっとわたしは、奏人のことばかりを考えていることに気付いて、ハッとしたんだ。
「……そう、かな」
「そうだよ。さっきもそうだよ。あたしが挨拶しても、なんか元気なくて上の空だったし。……何かあったの?」
藍那にそう言われたわたしは、口を開くことが出来なかった。……新しく来た社長が、わたしのかつて愛した恋人と同じ顔だと言ったら、藍那は信じてくれるのだろうか。 そんな考えが、わたしの頭の中に巡った。