【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜
その日を境に、わたしは五月女社長と少しずつ距離を縮めることになった。
「奈都、お疲れ様」
「さ、五月女社長、お疲れ様です……」
あの日から五月女社長は、わたしのことをずっど奈都゙と呼ぶようになった。 そして隙あらば、スキンシップを取るようになってきた。
頬に触れてきたり、髪を撫でてきたり。……時にはキスしようとしてきたりするのだ。冗談なのか冗談じゃないのか、区別が付かなくて困るのも確かであって……。
社長と少しずつ距離が縮まっているのは確かだけど、それすらわたしにはどうしたらいいのか分からないのだ。……結局わたしは、まだ奏人という人間に支配されているのだろうと思った。
奏人と五月女社長を比べることはタブーだということは分かっているし、そうしてはいけないことだって充分に分かっているつもりだ。
けれど同じ顔の人物を前に冷静でいられる自信なんかわたしにはなくて……。いつも焦っている気がした。落ち着かないのだ。