【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜



「奈都」と名前を呼ばれる度に、わたしはいつもドキドキする。……だけどその分、不安になる。

「俺をとことん利用すればいい」 

 社長はあの時、そう言ってくれたけど……。社長を利用すればするほど、わたしはきっと彼に対して罪悪感を感じてしまう気がした。……だからわたしは、彼を利用することなんて出来ない。

 彼を利用して罪悪感を感じてしまったら、彼はわたしをきっと嫌う。そしてわたしを憎むかもしれない。……そんな考えばかり、浮かんでしまうのだ。

「奈都」

「…………」

「奈都!」

「え!? あ、ごめん……何?」

「もう! わたしの話、聞いてた?」

 と藍那はわたしに言った。   

「ごめん。ぼーっとしてた……」

「奈都、アンタ……。社長のこと好きなの?」

「……え?」

 そう問いかけられて、わたしは答えることができなかった。……だって、分からない。わたしは彼のことを好きなの……?

 そもそも好きなのかどうかすら、分かっていない。
< 51 / 166 >

この作品をシェア

pagetop