【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜
「奈都」と名前を呼ばれる度に、わたしはいつもドキドキする。……だけどその分、不安になる。
「俺をとことん利用すればいい」
社長はあの時、そう言ってくれたけど……。社長を利用すればするほど、わたしはきっと彼に対して罪悪感を感じてしまう気がした。……だからわたしは、彼を利用することなんて出来ない。
彼を利用して罪悪感を感じてしまったら、彼はわたしをきっと嫌う。そしてわたしを憎むかもしれない。……そんな考えばかり、浮かんでしまうのだ。
「奈都」
「…………」
「奈都!」
「え!? あ、ごめん……何?」
「もう! わたしの話、聞いてた?」
と藍那はわたしに言った。
「ごめん。ぼーっとしてた……」
「奈都、アンタ……。社長のこと好きなの?」
「……え?」
そう問いかけられて、わたしは答えることができなかった。……だって、分からない。わたしは彼のことを好きなの……?
そもそも好きなのかどうかすら、分かっていない。