【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜
「言っただろ?無理に奏人のことを忘れろと言わない。……だけど、もし出来るのなら、今度は俺を見てほしい。俺だけを見てほしい」
「……五月女、社長」
「奈都が奏人を忘れられないのは知っている。あんなにも深く愛した男のことを簡単に忘れられる訳はないからな。……だから奏人の代わりでも構わない。俺のことだけを見ててほしい」
そう言われたわたしは、なぜかすぐに答えることができなかった。……嬉しさと切なさと、そして心にチクっと刺さるこの痛みが、わたしを困らせる。
「しゃ……ちょ……」
わたしは思わず下を向いて、俯いた。……涙を堪えるのに必死だった。
「それで奈都が俺を見てくれるなら、俺は利用されても構わない。俺を存分に利用してくれ。俺を奏人だと思って。……そしたら俺は、奈都の頭の中を俺のことでいっぱいにする。 俺しか考えられなくなるくらいにな」
彼のその言葉で、ついにわたしの涙腺は崩壊した。 そんなにも優しくされ、わたしの心は完全に揺らいでしまった。