【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜
恋人か、別人か
「……お、お疲れ様……です」
ようやく声を振り絞ったわたしは、それしか言えなかった。
「ああ、お疲れ様」
五月女社長は、ニコリと微笑みわたしにそう答えてくれた。その表情を見た瞬間に、ドキッとした。 その笑顔が、まるで奏人に似ていたから。
「……奏人、待って!」
「え?」
「あ、いえ……! すみません、失礼しました……!」
わたしは思わず、五月女社長の前で奏人の名前を呼んでしまった。 そんなつもり、まるでなかったのに。体が思わず反応してしまったみたいだった。
何やってんだろ……わたし。彼は五月女社長であって、奏人ではない。顔は同じでも、名前も違うのだ。……そんな訳、ない。奏人な訳はない。
「はぁ……はぁ……」
五月女社長のことを奏人と呼んでしまい焦ったわたしは、そのまま保管庫に走ってきてしまった。……本当にやってしまった。五月女社長の前で、まさか奏人の名前を呼んでしまうなんて……。
これはまさに大失態だ……。