【完結】君の全てを奪いたい〜俺の愛で埋め尽くす〜
「……好きだよ、奈都」
「わたしも……好きです」
寝る前、軽く口付けを交してから、部屋の電気を消してそのまま眠りに付いた。
その日わたしは、夢を見た。夢の中に出てきたのは、咲哉さんではなく、奏人だった。……夢の中にいた奏人は、笑っていた。「奈都!こっちだだよ!」そう言って満面の笑みを浮かべていた。
「奏人……ちょっと待って! どこ行くの?」
とわたしが問い掛けても、奏人は何も言わずにそのままどんどん歩いてしまうのだ。頑張って手を伸ばしても、届きそうで届かない。
「奈都!こっちだよ!」
そう呼ばれて足を進めているのに、全然追いつけない。そしてまたどんどんと離れていく。……どれだけ手を伸ばしても、絶対に届かない。
どうして? どうして届かないの……?
「奏人……待って……! お願いだから、行かないで!」
わたしがそう言っているのに、奏人は笑ってばかりで……。そんなわたしに、奏人は手を伸ばしてもくれないのだ。……手を伸ばしてるのは、わたしだけだった。