エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「デートをしないか」
デー…と? それは、私と社長が?
「二人きりで出かけたい」
なんで、どうして? どうして私と?
聞きたいことはいっぱいあるのに、驚きと妙な緊張感で何一つ出てこない。
「プライベート…ですか?」
そんなの、決まってるじゃない。
社長が社長としてじゃなくて、鴻上春希として私を誘ってる時点で。
帰ってくる答えがわかっていても聞いてしまう。
「そうだ」
「どうして…?」
問い詰めるような私に、社長はくすっと笑った。
「やっぱ、一筋縄ではいかないか。 条件をつけよう」
私は社長の言葉を待つ。
「明日のプレゼンが上手くいったら、俺とデートして」
そんな条件、ずるすぎる。
だって、社長がプレゼンを失敗するわけないもの。
それは私が一番よくわかってる。 ってことを、社長はよくわかってる。
「陽葵のこと、もっと知りたい」
ど、ど、どうして私……。
何を聞いてもやっぱりそこにたどり着く。
どうして私なのか。
社長は、可愛い子にも美人なお姉さんにも、ご令嬢にも告白されて、モテモテなのに。
私なんか、ちょっと口の悪いただの秘書でしょう?
それとも社長は私をずっと女として見ていたの?
もしかして気まぐれ?酔ってるの?
「ま、陽葵に拒否権、ないけどね」
本気…?
結局その日は社長の真意なんて掴めないまま、二十一時手前でお開きとなった。
私は終始悶々としていた。
新作のカクテルがとても美味しかったのを覚えているくらいで、自分が自分じゃないみたいで落ち着かなかった。