エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~

「デートをしないか」

デー…と? それは、私と社長が?

「二人きりで出かけたい」

なんで、どうして? どうして私と?
聞きたいことはいっぱいあるのに、驚きと妙な緊張感で何一つ出てこない。

「プライベート…ですか?」

そんなの、決まってるじゃない。
社長が社長としてじゃなくて、鴻上春希として私を誘ってる時点で。
帰ってくる答えがわかっていても聞いてしまう。

「そうだ」

「どうして…?」

問い詰めるような私に、社長はくすっと笑った。

「やっぱ、一筋縄ではいかないか。 条件をつけよう」

私は社長の言葉を待つ。

「明日のプレゼンが上手くいったら、俺とデートして」

そんな条件、ずるすぎる。
だって、社長がプレゼンを失敗するわけないもの。
それは私が一番よくわかってる。 ってことを、社長はよくわかってる。

「陽葵のこと、もっと知りたい」

ど、ど、どうして私……。
何を聞いてもやっぱりそこにたどり着く。
どうして私なのか。
社長は、可愛い子にも美人なお姉さんにも、ご令嬢にも告白されて、モテモテなのに。
私なんか、ちょっと口の悪いただの秘書でしょう?
それとも社長は私をずっと女として見ていたの?
もしかして気まぐれ?酔ってるの?

「ま、陽葵に拒否権、ないけどね」

本気…?

結局その日は社長の真意なんて掴めないまま、二十一時手前でお開きとなった。
私は終始悶々としていた。
新作のカクテルがとても美味しかったのを覚えているくらいで、自分が自分じゃないみたいで落ち着かなかった。




< 10 / 87 >

この作品をシェア

pagetop