エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
私が会社に戻って一時間ほどあと、社長が帰社した。
社長はプレゼンの大成功を嬉しそうに報告し、「デートの日取りを決めないと」と早速私にスケジュールの確認を要求してきた。
冷蔵庫に保管しておいてチーズケーキを出してきて紅茶を淹れ、優雅にティータイムだ。
「美味い。 秋月はいつも良いとこに目をつけるよなあ」
「そう言っていただけて何よりです。 同じお店でクッキーも買っちゃいまして。 社長は抹茶がお好きでしたよね。帰りにお渡しします」
今渡しても、社長のことだから帰るまでにカバンの中で粉々にしてしまいそう。
甘党な社長は「ありがとう」と嬉しそうだ。
うんうん。喜んでくれるとやっぱり嬉しいなぁ。
「ところで、デートのことだが」
ほんわかした雰囲気が一転、フォークを置いた社長の言葉にぴくりと反応する。
「今週の金曜はどうだ。 確か、会食もなかったよな」
「ええ、そうですね。 その日なら……と思ったんですけど、つい先程予定が入ってしまいました」
実は社長を待っている間に岩倉くんから連絡があり、週末に会う約束をしたのだ。
「珍しいな」
「私にだって友達はいますから。 大学の時の同級生なんです。 今日久しぶりに会って」
平日は社長に呼び出されればすっ飛んで行ったので友達がいないとでも思われているのか。
失礼なー!
「男か」
「え?」
急に低い声で言われ、どきりとする。
「会うのは男なのか?」
「え…ええ、まぁ、はい」
若干不機嫌にも聞こえる社長の声色を不思議に思いながら正直に答える。
するとやっぱり、社長が面白くなさそうに反応した。
「………陽葵が他の男と一緒にいるところを想像すると、妬ける」
「はっ!? へ、えぇ?」
陽葵呼び?からのヤキモチ?
なんですかそれ!
恋人じゃあるまいし、謎ですぞ。
「や、妬けるとか、なんですか、それ」
「ヤキモチ」
そ、それはわかるんですけど!
な、なぜ社長が!?
「……なんて、遅くならないようにしろよ。 俺とのデートは土曜にしよう」
なんだ…冗談…。
もうー! びっくりした。
あぁ! ていうかさらっと休日に会う約束取り付けられてる。
まぁ予定はありませんが!
私は内心ドキドキしながら、それを悟られないようにチーズケーキをひたすら食べ進めた。