エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
駅構内できょろきょろと社長の姿を探していると、不意に声がかかった。
「陽葵、こっち」
前方に社長を発見。
小走りで駆け寄る。
「おはよう。 って時間じゃないか」
「おはよう……ございます…」
うっっわぁ。やっぱ、この人カッコイイわ。
きらっきらしてるよ。眩しいよ。
ジーンズに白Tシャツ、ジャッケットというカジュアルなコーデは、不覚にも私の好みなんだもの。
無駄にどきどきさせないでほしい。
「陽葵……可愛い」
ふわりとした緩い笑顔を向けてくる。
そんな素直に褒めないで。
恥ずかしい!
「社長には、敵いませんよ」
「春希って呼んでくれないの?」
そうだった、プライベートだった。
この間そういう話になったんだよね。
社長は初っ端からきっちりプライベートモードですもんね。
「……春希さん。 今日はどこへ行くんですか?」
視線を逸らしてボソッと言うと、それでも社長は嬉しそうに笑う。
ああー、そんな笑顔、反則ですって。
「遊園地。 ちょっとした動物園も一緒のとこなんだ。 子供っぽくて嫌か?」
「いえ。 遊園地、好きです! 一応スニーカー履いてきて良かったあ」
社長の選ぶ場所が意外にもレジャー施設なのが面白い。
この人の事だから、美術館にでも連れていかれるのかと思っていた。
好感度、アップであります。
「行こうか」
社長はにこりと笑って当たり前のように手を差し出す。
手を繋ごうと誘われているのだ。
その手を取るのを躊躇っていると、またまた当然と言わんばかりに「デートだろ」と。
デートなんですね、そうなんですよね。
私たち、今日デートするんですよね!
恐る恐る手を触れると、そのままきゅっと握られた。
社長のおっきい手が私の手を優しく包み込んでいる。
人の手とは、こんなに暖かかったっけ。
恥ずかしいよ。
羞恥心が爆発しそうで、私は社長の顔が見られなかった。