エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
ほらほら。 そういうもんなのよ。好きになって付き合ったって、どうせすぐ別れるんだから。 結婚なんかして別れたくなったらどうするの? それだけでバツがひとつついちゃうじゃない。

「そんなこと言ってたら、一生結婚なんて出来なそうだね」

「はああ! 相変わらず辛辣! でもそこが好き!」

親友からの告白はなかなか悪くないのよね。
私はへへっと気持ち悪く笑ってジョッキを傾ける。

「でも、陽葵は結婚に夢無さすぎ」

「仕方ないでしょう。 それは」

「だとしてもだよ! 世の中、陽葵んとこみたいなのばっかりじゃないんだからね」

陽葵んとこ。 すなわち私の家庭。
もっというと私の両親のことだ。
私が人生に結婚はいらないと判断した理由である。

「おばさん、元気?」

「うん。 超元気。 ほんと、びっくりするくらい楽しそうよ」

両親はその昔、大恋愛の末結婚。
けれど結婚生活は上手くいかず、私が就職して実家を出たのをきっかけに離婚した。
それが一年前。
私には五つ上の兄がいて、子供の頃兄は両親が喧嘩を始めると必ず私を連れて外に出た。
おかげで大乱闘を目にすることは滅多になかったけれど、子供の前で喧嘩してまで離婚しようとしない両親には嫌気が差していた。

経済的な理由と世間体を気にして、『子供のために』と本当の理由を摩り替えてまで結婚生活を続けるのになんの意味があったのやら。
父は北海道に転勤になり、私と兄のところには月に一回仕送りがある。
今までのお詫びとか諸々込めているらしい。
母はパートを始めたり、お友達と趣味に勤しんだり。
良い意味で忙しそうだ。
皆で住んでいた家は売り払ったので、母はアパートに一人暮らし中。 様子を見に行くといきいきしてるから、もっと早くそうすれば良かったのにと、今でもたまに思う。

と、まぁそんなわけで、結婚にはどうしても良いイメージをもてないのだ。
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