エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
四、一難去ってまた一難



「春希さん、おはようございます」

「おはよう」

はぁ。拭えない。 新婚夫婦のような空気!!

旦那さんの起きる時間に合わせて朝食を作る妻……こういう構図、いかにもって感じすぎて調子が狂うな、もう。
全然そんなんじゃないのに、社長まで昨日あんなこと言うから!


私はゲストルームという部屋を貸してもらった。 そんな名前の部屋が存在するのも驚きだが、
さすがにベッドもふっかふかで寝心地が良すぎる。
おかげで隣の部屋に社長がいると分かっていてもぐっすり寝られた。
人生で一番の良質な睡眠と言っても過言ではない気がする。

ハムに火が通ったところでフライパンに卵を割り、水を入れて蓋をする。

「黄身の硬さはどうしますか?」

「半熟で頼む」

「了解です」

私も半熟が一番好きだ。
好みが一緒なの、なんだか嬉しいなー。

出来上がっているサラダも買ったので、お皿にハムとサラダを盛り付けていく。
最後に黄身が割れないように注意しながら目玉焼きを乗せて完成だ。
社長が寝る前にセットしたお米も炊き上がっている。

食卓に並べたところで、着替えた社長がやってくる。

「美味そう」

「簡単なものですが」

席につき、二人で手を合わせて食事をスタートした。

「美味い。 黄身の硬さが絶妙で最高だ。 陽葵は天才か」

「大袈裟ですよ」

大絶賛されて、少々気恥ずかしくなる。
卵とハムを焼いただけでこんなに喜んでもらえるなんて。

「服、アイロンかけた方がいいかもしれない。 乾燥機かけるとシワシワになるんだよなー」

「ありがとうございます、助かりました」

昨日身につけていた洋服を洗濯し、乾燥までしてくれたのだ。
ちなみに私はまだパジャマのままで、髪も適当にまとめただけ。
さすがにスッピンは見せられないので軽く化粧はしたけれど。

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