エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~


社長は運転が上手かった。
これでペーパードライバーとか言うのだから、才能と素質が備わっているんだとひとり納得する。
とても初めての運転とは思いないと言うと、ちょっとバツが悪そうにして『ここ数日、練習した』って。
それってこのデートのためなんだよね。
健気というか抜かりないというか。
なんにせよ、私は嬉しくなってしまった。
可愛いことしてくれるんだもん。社長。


現在十二時半すぎ。
計画通り、到着して直ぐにお昼ご飯ね。

あぁ、緊張してきた。
家族以外の人…しかも男性に手料理を食べてもらうなんて初めてだもの。
お口に合うだろうか。
きっと彼は舌が肥えているに違いない。
あえていつも通りのメニューにしたけれど、大丈夫だろうか。
今更不安になってきた。
ふと、隣に立って公園のほうに目を凝らす社長の横顔を盗み見る。
横顔もカッコイイ彼は、どんな反応をするかな。

そうだ。 社長は多分、美味しくなくても美味しいって言ってくれる人だ。
少し困った顔をするかもしれないけど、完食してくれるんじゃないかな。
そうならないように、私も気合を入れたんだから。

「行きましょ、春希さん」

「どうした。 珍しく乗り気じゃないか」

それはあなたもでしょう?
いつもより表情が明るいの、気づいてますから。

暖かな気候と穏やかな空気が、私たちの距離をいつもより近くしそうな、そんな気がした。

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