エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
いつもはパソコンやタブレットで資料作りもやってしまうのに、今回のはわざわざ紙を使用している。
プレゼン相手の社長さんは機械系に疎いというか苦手らしく、そこを考慮してのことだ。
そういうところは抜かりないから、仕事の腕は抜群なのだ。
けれどこんな風にものを無くしたりドジるのも得意な社長。
一緒に仕事をするだけの人達はみんな、社長のこと手放しで尊敬してるんだろうなあ。
私にはとてもじゃないけど無理なことだ。
尊敬はするけど、心の底からって言うのには無理がある。

「よし。 無事見つかったし、飲みにでも行くか」

「ここ、片付けてからにしてください」

「そんなの明日でいいじゃないか」

「ダメです。 そういうこと言ってるから無くすんです!」

私は社長が散らかした封筒やらをかき集め、根こそぎ棚から外された箱に入れていく。
ふと、小花が散りばめられた可愛らしい封筒に目がついた。
これは……どう考えても仕事関係じゃなさそうね。

「社長、これ」

「ん? ああ、それね。 ラブレターだよ」

それくらいわかってる!
しかも差出人はかなり良いとこのお嬢様じゃないの。
封が開けられた痕跡がないから、読んだのかどうかを心配してるの! こっちは!
ご令嬢の恋文を無視するなんて、どこにそんな度胸があるのやら。

「読まれたんですか?」

「いや、まだ」

「今すぐ読んでください! 振るなら振るでお返事しないと、お相手に失礼ですよ」

心底面倒くさそうな顔をする彼、鴻上春希(こうがみ はるき)はモテる。
それはもうこの通り、今どきラブレターをもらっちゃうくらい。
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