エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「どうですか? お口に合いますか」
「美味い! やっぱり陽葵、料理の才があるぞ!」
「良かった。 作った甲斐があります」
目玉焼きに続き、お弁当も好評で何よりだ。
社長が心から美味しいって思ってくれているのも伝わってくる。
すごい勢いで食べているのに、所作は綺麗で米粒ひとつ零すまいという心意気を感じる。
やっぱこういうところ、いいとこのお坊ちゃんとして育ったんだなぁ。
さすがです。
私も気を緩めて食べ始める。
うん、うん。 美味しい。
レジャーシートを敷き、お弁当を広げる二人。こうしていると、どこぞの仲良しカップルだよ! って突っ込んじゃうわ。
社長は幸せそうだし、あぁ。 平和だなぁ。
「桜が満開の頃に来たらもっと楽しそう」
この公園一帯には桜の木が植わっていて、満開の季節なんか絶対素敵。
想像しただけで心がぽかぽかしてくるよ。
「じゃあ、来年はその時期に来よう。 桜と陽葵は相性が良さそうだな」
「来年…?」
それ、どういう意味で言ってるんですか?
「今年だけとは言わせないぞ。 来年も再来年も、その先もずっとだ。 一緒に居られたらいいな」
「そ、それ、プロポーズじゃないですか!」
今はどう考えてもプライベートだ。
ずっと一緒にって、公私共にって意味に聞こえるんですけど!
「そう受け取ってくれて嬉しいよ」
なんで? どうして?
付き合ってもないのにプロポーズ?
「私たち、付き合ってないですよね。 どういう立場でそんなことを言ってるんですか……」
私には分からない。
プロポーズって、恋愛して、両思いになった男女が、この先もずっと一緒にって思った時にするものでしょう?
それに、今はそう思っていても、いずれは――
「陽葵」
不意に名前を呼ばれる。
彼を仰ぎみると、ドキッとするくらい優しい瞳が私を捉えていた。
「好きだ」