エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
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「そっか。 保留ねぇ」
神妙な顔で何度も頷く茉梨香。
「いいんじゃない。 でも、悩む理由は話した方がいいかも。 相手にとったら焦らされてるも同然だしね、今の状況。 まさか〝考えさせて〟って言われるとは思わなかっただろうし」
「だよね。 うん、近いうちに話そうと思う」
「ところでさぁ。 どーして言ってくれなかったの!? まさかあんたと社長がそんなことになってたなんて! 私一言も聞いてないけど!」
茉梨香が口調も声量も変えて言う。
そう。私は今、社長とのことについて茉梨香に話したのだ。
とても一人で抱えきれる案件じゃなかったのであります……。
「いやぁ、ごめん! なんか言うタイミング逃したっていうか〜。 まぁまぁ、今日は私のおごりですんで、お飲みくださいな。 茉梨香さん」
「飲むわよ! ありがとね!? そして面白いからもっと聞かせて。 ていうか社長の写真とかないの? イケメンなんでしょう?」
茉梨香は百面相してビールをごくっと飲み干す。
「写真ね、この間出かけた時、一枚だけ撮ったのがあるよ」
といっても、写真を撮ってくださいってお願いされた社長が、じゃあお返しにお撮りしますよって撮られただけなんだけど。
二人とも、思い出を写真に…とかロマンチストじゃないのよね。
私はフォルダを開いてその写真をタップする。
五月の花が咲き乱れる花壇を背景に、ツーショットだ。
スマホを渡すと、受け取った茉梨香がカッと目を見開いて叫び声を上げた。
「うっっわ! これは予想以上のイケメンだわ。陽葵、よくこんな人……いや、でも陽葵可愛いからなぁ。 社長が惚れるの分かるわ〜。 お似合いよ、二人」
「そーかな。 私はよく分かんないよ」
でも、社長とお似合いってのは嬉しいかも。
って、待ったかけといてこんな浮き足立ってちゃだめだ。