エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~


翌木曜日、俺は寝不足で重たい頭を抱えて出社した。
陽葵はそんな俺の異変に気づき、気にかけてくれる。
なんて出来た秘書なんだろう……。

「聞いて。 書いたんだよ、返事を」

少し得意げになってみせると、陽葵は訝しげな顔をする。
驚くだろうか。 見直してくれるだろうか。
結局、書いたのは一言だけだ。

カバンから便箋を取り出して広げる。


「………どういう心境の変化ですか?」

予想外の反応に肩透かしをくらったようだった。
あっさりしすぎていないか?
俺はてっきり喜んでくれると思った。
お相手も喜びますねって笑ってくれるかと思ったんだが……。

「そのままだと味気ないですから、封筒に入れたらどうでしょう。 お相手は、さぞお喜びになるでしょうね。 益々熱烈なファンが増えたりして」

怖いことを言わないでほしい。
けれどその可能性は考えなかったな。
返事を書いたら激化するとは。

「封筒なら、用意している。 陽葵に見せてから封をしようと思って」

「…別に、わざわざ私に見せる必要ないんじゃないですか」

陽葵にしては珍しく、声のトーンがこれでもかと下がった。

何か気に障るようなことを言ったのか! 俺は。
馬鹿、これ以上嫌われてどうする…!!

「陽葵――」

「すみません。 なんでもないです」
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