エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
社内にはもちろんのこと、人目社長を見かけただけでもぽぽぽっと惚れちゃう人がたくさんいる。
それなのに張本人は、告白は全部断るし、ラブレターは無視するし。
一体何を考えているんだか。
私が見るところ、特定の女性がいるわけでもなさそうだ。

黒目がちな瞳に形のいい鼻と唇、きりりとした眉には厳格さもある。
けれど物腰は柔らかで、人当たりのいい性格をしている上に大企業の社長。
イケメンハイスペックのくせに、宝の持ち腐れとでも言っておこうか。
女性なんて選り取り見取りだろう。
毎回毎回社長に振られた女子社員を見る度、勿体ないなぁと思っている。

「わかったよ。 読むから、怒るなって」

怒ってませんよ、別に。
思いながら若干苛立って手紙を手渡す。
社長に惚れてる女性に教えてやりたい。
この人は思ってるより完璧じゃないんですよ。
適当で面倒くさがりやで薄情で。
見てくれに騙されない方がいいですよーなんてね。

「返事はいらないってさ」

はやい!もっと丁寧に読んで欲しいわ。

「そうですか」

「ところでこれ、どうしたらいい?」

読み終えて、もう封筒に仕舞い戻した社長は本気でそんなことを訊いてくる。

「知りませんよ! 大事にしまっといたらいいんじゃないですか」

「そうは言ってもなあ。 仕舞うとこないんだよ」

あなた仕事の書類と一緒に置いてたでしょうよ。

「秋月、欲しい?」

「ばかなこと言わないでください! ほんと最低!」
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