エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
『もしもし、陽葵…?』
「茉梨香? どうしたの? ……泣いてる?」
ただならぬ状況なのを察した。
『ごめん、仕事中だよね…?』
「それはいいから、どうしたの? 何かあっ――」
『どう、しよう……』
平静を保てないくらいなのが伝わる。
「落ち着いて! 今どこ!?」
『私のマンションの最寄り駅の……トイレにいる…』
「すぐ行くから! そこ、動かないでね?」
『う…ん』
電話は繋いだまま、私は社長に早退すると言い切った。
すると社長は極めて冷静に、落ち着いた表情のまま言う。
「陽葵、落ち着け。 何があった」
「と、友達が……風邪、ひいたみたいで! 食べるものなくて困ってるって」
社長には変な心配をかけられない。
「……その友達、今どこにいるって?」
彼は立ち上がってスーツを羽織った。
「社長! 大丈夫です、私――」
「駄目だ。 一人では行かせない」
社長はまるで私がしようとすることを分かっているみたいに言った。
私が相当焦っていたせいかもしれない。
「佐倉? 今すぐ車出して」
手早く電話を済ませ、社長は私を連れて外へ出た。
止まっていた車に乗りこみ、なすがままに私は茉梨香のいる駅を告げる。
「タクシーより早いだろ。 うちの運転手は」
「捕まらない程度に、スピードを出しますから」
二人の掛け合いに少しだけ冷静さを取り戻した。
「社長、佐倉さん……ありがとうございます」
隣に社長がいる。
それは私をどこまでも落ち着かせる事実だった。
「茉梨香? どうしたの? ……泣いてる?」
ただならぬ状況なのを察した。
『ごめん、仕事中だよね…?』
「それはいいから、どうしたの? 何かあっ――」
『どう、しよう……』
平静を保てないくらいなのが伝わる。
「落ち着いて! 今どこ!?」
『私のマンションの最寄り駅の……トイレにいる…』
「すぐ行くから! そこ、動かないでね?」
『う…ん』
電話は繋いだまま、私は社長に早退すると言い切った。
すると社長は極めて冷静に、落ち着いた表情のまま言う。
「陽葵、落ち着け。 何があった」
「と、友達が……風邪、ひいたみたいで! 食べるものなくて困ってるって」
社長には変な心配をかけられない。
「……その友達、今どこにいるって?」
彼は立ち上がってスーツを羽織った。
「社長! 大丈夫です、私――」
「駄目だ。 一人では行かせない」
社長はまるで私がしようとすることを分かっているみたいに言った。
私が相当焦っていたせいかもしれない。
「佐倉? 今すぐ車出して」
手早く電話を済ませ、社長は私を連れて外へ出た。
止まっていた車に乗りこみ、なすがままに私は茉梨香のいる駅を告げる。
「タクシーより早いだろ。 うちの運転手は」
「捕まらない程度に、スピードを出しますから」
二人の掛け合いに少しだけ冷静さを取り戻した。
「社長、佐倉さん……ありがとうございます」
隣に社長がいる。
それは私をどこまでも落ち着かせる事実だった。