エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
「茉梨香!!」
「陽葵…?」
「そうよ、開けて!」
駅に着くと、車から飛び降りた。
幸いこの駅にトイレは一箇所しかなく、社長にはトイレの外で待機してもらい、私は茉梨香を見つけることができた。
けれど茉梨香は決して無事とは言い難い姿をしていて、涙目の彼女につられそうになる。
茉梨香の頬についた痛々しい傷が、事の顛末を物語っているようだった。
「ごめん、迷惑……かけて」
「ううん。 ありがとう、頼ってくれて。 外に社長がいるから、出てきて大丈夫よ。 彼、守ってくれると思う」
「うん」
茉梨香を支えて立ち上がり、トイレを出る。
「社長」
「陽葵。 このまま俺の家へ行こう。 多分、セキュリティは一番しっかりしてる。 対応はその後だ」
「はい、ありがとうございます」
今は、迷惑とかなんだかんだ考えてる暇はない。
社長が一緒に来てくれた時点で、もう関係ないと帰ってもらうのはお門違いだと思うことにした。
社長がいてくれて本当に良かったもの。
彼がいてくれなければ今ごろ茉梨香と二人でパニックになっていた。
頼りになりますです。 社長。