エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~
するとその時、茉梨香のスマホが震えた。
案の定、着信は彼氏かららしく、茉梨香は恐る恐る社長にスマホを手渡した。
受け取ると社長はすぐに電話に出た。
「初めまして。 私、鴻上と申しますが――」
一切空気が揺らぐことなく、社長は何やら場所と時間を指定して相手と会う約束をしている。
電話を終えるとまたもや余裕たっぷりの笑みを湛えた。
「ちょっと出てきます。 陽葵、留守番頼む」
「あ、はい…!」
さっさと部屋を出ていく姿を、私たちはぽかんと見送った。
部屋主がいない間はなんとなく気まずい。
けれど社長ならきっと、決着をつけてきてくれる。
「頼りになるね、社長」
茉梨香がしんみりと言う。
それは本当にそう思う。
仕事をする勢いで展開していくんだもの。
「そうだね」
「初対面の私のことなのに、こんなにしてくれるなんて。 陽葵のこと、本当に大事に思ってるのが伝わってくる」
私は黙って聞いていた。
「巻き込まれて、陽葵が危ない目に遭わないようにってことだよね、きっと」
「そうかな…。 正義感が強いだけかも」
「ううん。 陽葵、大事にされてるよ」
ほんと、その通りなのかもしれない。
そう思ってもいいかな。