エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~


「無理しなくていいよ」

社長はいつもと変わらない笑顔を浮かべた。
プロポーズを忘れて…なかったことにして、その後、私は自分から言えるだろうか。

「無理なんかしてません」

「じゃあなんで泣きそうなんだよ」

社長は薄く微笑むけど、私は笑えない。
違う。 泣きそうなのは、社長が予想外なこと言うから。
無理してるからじゃなくて!

「……そういうことだから、もう悩まなくていい」

このまま本当に終わらせてしまったら、もうプライベートな時間は過ごせないんじゃないの?
それとも今までが少し近すぎただけなの?
ほんの少し前までは、定期的にご褒美にお酒を一緒に飲むだけだった関係で、デートなんて行くようになったのがおかしかった?


違う。
距離が縮まって、プロポーズまでされて、だから私は社長が好きだって気づいたんだもん。
終わっていいわけない。
それなのに、どうして話を聞いてくれないの。
話があるって言ったのに。
時間稼ぎのために先手取らせたのは私だけど――!!



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