エリートな彼の好きな女 ~ウブな秘書は恋愛をしたくないのです~

「はぁ……もうこの話はいいです。 早く食べちゃってください」

私は社長の話を聞きながらなんの躊躇もなくお昼ご飯を食べているけど、社長はまだ一口も手をつけていない。
やっと食べ始めた社長の横顔に話しかける。

「そういえば、この間手紙にお返事出したじゃないですか。 案の定、ラブレターよりもファンレターが増えましたね。 毎日毎日どっかどっか来ますよ」

そうなのだ。
私が冗談のつもりで…というか嫌味混じりに言ったことが現実化してしまった。
『益々熱烈なファンが増えたりして』なんて物騒なこと、言うもんじゃないな、ほんと。

「ちゃんと読んでくださいね」

「うーん。 でもなぁ。 読むと陽葵がやきもち妬くからなー」

「や、やきませんっ!」


この間、手紙の返事を見せられた時にヤキモチ妬いたとカミングアウトしたのが間違いだった。
私は嫉妬深い彼女って認識されちゃったよ。

社長が仏頂面で言った。

「最近佐倉とも仲良くなってるじゃないか」

「あぁ、それは。 お世話になりましたし、ね」

ついこの間、茉梨香から預かったお礼のお菓子を、私が佐倉さんに渡したのだ。
その時に少し世間話をして、佐倉さんのお堅い印象がかなり崩れた。
それからは車内に二人きりでも全然大丈夫だし、なんなら二人で楽しくお話もする。
社長はそれを仲良くなったって思ってるのね。
間違ってはないけれど……

「社長ほど親しい間柄じゃありませんよ」

何の気なしに言った言葉に、社長がふっと笑う。

「そーだな。 俺と陽葵の仲は深いもんなー」

「へ、変な言い方しないでください…!」

毎日こんなこと言われてるのだ。
疲れちゃう。
だけど決して、苦痛じゃないのがくすぐったい。
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