24時の鐘と俺様オオカミ
「……それは、」


 だって、


(聞きたく、なかったから)


 口をつぐんで俯けば、大路君は私の前にやって来てしゃがみこんだ。

 けれど、言葉の続きを急かすわけでもなく。
 ただ一言、


「足、出せ」


 ぶっきらぼうにそう呟く。

 おずおずと上履きの脱げた左足を差し出すと、どこかの童話に出てきた王子様のように、優しい手つきで持っていたそれを私にはかせた。
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