夜空の中に輝く君を見つける
そうだ。彼女は天文部だった。星が好きなんだろうな。

「もう7時前だけど、君は帰らなくて大丈夫なの?」

「私はだいじょーぶ。家近いからね。奏人くんは?」

「まぁ、大丈夫だけど。」

「じゃ、いいよね。」

そう言って彼女は屋上のコンクリートの上に寝転んだ。

昼は賑やかな都会が数キロもすればある山の中の高校。でも夜は都内の音は全く聞こえず、明かりも学校のまわりの明かりもほとんどなく、とても静かな真夜中に変わる。

今は7時前。流石にそろそろ暗くなってくる。夕焼けはもう消えていて、あとzyっ分もすれば空は黒色に染まるだろう。

僕も彼女の横から人2人分くらい間を開けてコンクリートの上に寝転んだ。

空には案外星が光っていて、不意にも綺麗だと思った。

「ね。綺麗でしょ。星っておっても過去の光なんだよ。」

そんなこと、小学校の理科の先生が教えてくれた気がする。あの先生、むだばなしの割合が7割とかだったなぁ。

「私の夢ってね。星になることなの。」

「随分と非現実的なことを言うね。」

「人ってね。死んじゃったら星になるんだって。それで、とっても遠くてとっても昔の光をいきている人に届けるの。それってとってもすごいことじゃない?」

僕の言葉なんか無視して彼女はしゃべり続ける。

「それって、自分は死んでもみんなの目には写ってるよって意味だと思うんだ。しんでもみんなが見ている夜空の中に私はいるし、記憶の中にとどまってるって言えるじゃん。だから、星になりたいの。」

彼女はそう言った。その言葉に深い意味はないのだろう。だけど、彼女のことだから、また特殊な考えをしているのかもしれないと思った。だけど今の僕にはその意味を聴くほど彼女について知らない。

「奏人くんは、私を知りたいって言ったよね。」

「あぁ、言ったね。」

「じゃあさ、もし私が星になっても私を見つけて、もっともっと知ろうとしてくれる?」

「あぁ。僕は君のことがもっと知りたい。」

「そう。ならよかった。」

ふと彼女の顔を見ると大きな瞳から涙がツーっと流れ落ちているのが見えた。

「…なんで泣いてるの。」

「へへ、なんでだろうね。」

そう言って彼女は立ち上がり、

「じゃあね。ありがとう。」

軽く僕に手を振り、一切顔を見せないで扉の方へ向かった。

「明日、13時。○○駅に集合。」

彼女はポツリと言って屋上から消えた。
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