夜空の中に輝く君を見つける
「っ、はぁ、はぁっ。」

普段走ることのない僕の体は久しぶりの運動に悲鳴を上げていた。

「お、来てくれたんだね。随分疲れているじゃん」そうニヤニヤと笑う彼女はどこか嬉しそうにも見えた。

「奏人くんのことだから聞こえないふりをして授業終わってすぐに帰っちゃうと思っていたよ。」

「ごめんだけど僕にも部活というものがあるんだ。今日来たのもただの気まぐれ。あんまり期待はしないでくれ。」

「あぁ、そっか!えぇっと、文学部?だったけ?そこで何してるの?」

「そう。僕は主に小説を書いたりしている。」

「お、私にも見せてよ」

「無理。絶対誰かに見せるだろう。あと、シンプルに返すのがすっごい遅そう。」

「え、いつごろに完成しそう?」

「きみは人の話を聞かないのが得意なんだね。僕は一日一時間とかしか書いていないから。しかもペースも結構遅いほうだから半年はかかる。早くても年明けごろだろうね。」

「…そっかぁ。」

彼女は少し悲しそうな顔をして力なく笑った。


「で?僕をここに呼び出した理由は?」

「そうそう!!えっとね。好き。付き合って。」

たったそれだけのために、ここに来たことが急にバカバカしく思えてきた。

「それだけ?じゃ。」

そう言って僕は屋上をあとにして、家へ向かった。

「あ、ちょっと!!」

と彼女が僕を呼び止める声が聞こえたが、今度も無視して足早に屋上から飛び出した
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