ピン球と彼女


とくん とくん

規則正しく、緩やかな振動に包まれていた。

息もできないけど、温かさだけは感じることができた。

どうしようもなく、切なくて。

もどかしくて、動きたくて。

何が、誰が、何を、どういう風に。

主語は、何も分からない。

暗闇に、潰されたのだろうか。

自分が何なのか、何をしているのか。

分からない。

自分は何も分からない。

ただ、感じられるのは、悲しくなる程の、温かみ。

これは、何?

突然、白い道が開けたかと思えば、温かみが離れ、その代わりに、一滴の、生温かい雫に濡らされた――。

< 1 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop