ピン球と彼女
***

「○☓、中学校……!?」

連れてこられた中学の、名前を見て絶句した。

ここ、あの女らの……!

神聖な場所に足を踏み入れるかのように、恐る恐る校内に足を着けた。

……?

とてつもない、違和感に襲われた。

ここ、知ってる……!

知らないけど、分かる。

多分、体育館なら行ける。

ど、どうして?  

何かの予感に心臓を震わせながら、進んだ。

カッコカッコ

足を止めた。 

前まで、あんなに煩しかったのに。

ピン球の跳ねる音が、誘っているようで、無意識に連れられた。

ああ、何なんだ、この感じ。

「し、失礼します……」

扉を開けた瞬間、脳天から電流が走ったように痺れた。
  
「あ、あ……う」

この音。

この卓球台の配置。  

独特な匂い。

人。

雰囲気。
  
    "いつもありがとうね" 
  

    "キュウスケのおかげだよ"


    "勝てたよ!キュウスケ!"


     "キュウスケ、です"

     
      "キュウスケ!!"


ああ、そうだ。

部活をやめられなかった理由。

向こうの学校の部活の雰囲気が嫌いだった理由。

打ち上げられたピン球に反応した理由。

あの平凡女に反応した理由。

あの夢を見た理由。

俺が、ここに転校してきた理由。

俺が、体育館が分かった理由。

「あああああああああっ!!」

全て、繋がった。
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