ピン球と彼女

ある意味、桜木のお陰で人間として紅葉に会えたのかもな。

皮肉な笑みを浮かべた後、直ぐに喋りたい欲望に駆られる。

話しかけたい。

抱き締めて、守ってやりたい。

でも、紅葉は、俺のこと、分かるのだろうか。

いきなり、「お前のピン球だった、キュウスケ、改めまして、卓也です」なんて言ったら普通、引くだろ。

まず、ピン球の生まれ変わりだなんて、信じられる訳がない。
 
あーあ、人間に戻ったって同じじゃねぇか。

諦めが足を動かし、未練がそれを止めようとしている。

自分なのに、2つの感情がぶつかり合って、制御しきれない。

本当、自分が分からない。

結局、何かから逃げるようにしてその場を走り去った。

< 15 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop