ピン球と彼女
ある意味、桜木のお陰で人間として紅葉に会えたのかもな。
皮肉な笑みを浮かべた後、直ぐに喋りたい欲望に駆られる。
話しかけたい。
抱き締めて、守ってやりたい。
でも、紅葉は、俺のこと、分かるのだろうか。
いきなり、「お前のピン球だった、キュウスケ、改めまして、卓也です」なんて言ったら普通、引くだろ。
まず、ピン球の生まれ変わりだなんて、信じられる訳がない。
あーあ、人間に戻ったって同じじゃねぇか。
諦めが足を動かし、未練がそれを止めようとしている。
自分なのに、2つの感情がぶつかり合って、制御しきれない。
本当、自分が分からない。
結局、何かから逃げるようにしてその場を走り去った。