ピン球と彼女
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暗闇の中、ぼんやりとした光に向かい合う。
機械的な効果音、コントローラーを操作する音が無機質で冷たかった。
『GAMEOVER』の文字が煽るように大きく表示され、舌打ちをした。
ダメだ、今日は調子悪ぃ。
試合に行くメンバーが発表されてから今日まで、一度もラケットに触れていない。
体育館にすら、足を踏み出そうともしなかった。
試合は、明日だというのに。
今では、試合を棄権してやろうか、とも思えてしまう。
顧問には、何度も何度も部活に来い、と催促されたが、そんなことを言われると余計に行きたくなくなる。
俺にとって、部活はそんなに大きな存在じゃないんだ。
――だからといって、部活を辞められない俺は、一体どうしたいんだよ。
自分で、自分が一番分からない。
ゲームだって、現在になってeスポーツという競技が出てきたが、俺なんか指先すら、触れることができない。
何もかも中途半端な自分に腹が立つ。
もういい。
ブツリ、と考えるのを断ち切るようにゲームの稼働を強制的に切った。
どうせ、俺は明日の試合に行かないからな。
俺は、卓球が好きな訳じゃないんだ。
そのまま、目を瞑るといつの間にか意識が消えていた。