ピン球と彼女

「卓也……」

「卓也」

「卓也!」

「起きろ卓也!行くぞ!」

大きな振動が鼓膜を激しく揺すり、キーンと甲高い音が響いた。

耳を押さえながら、何故か俺の部屋にいる部活仲間を睨みつける。

「お前ら、何で俺んちいるんだよ。そんで、人が寝てるときに大声出すな、うるせぇ」

「何を寝ぼけたことを言ってるんだ。今日は試合だぞ?」

「知ってる」

て、いうか知ってて寝てる。

「おお、やっぱり知ってるじゃないか。じゃあ、行くぞー!」

「行ってらっしゃい。健闘を祈る」

あくびをしながらそう言い放ち、また布団に潜り込む。

「なーに言ってんだ、卓也。お前も強制連行だっ!」
 
一気に布団を引き剥がされ、担ぎあげられる。

「おい、やめろよ、降ろせ!」

ジタバタ暴れてみるが、7対1では敵わない。

「さ、行くぞ〜!」

わっしょいわっしょい、とでも言い兼ねないその雰囲気にタジタジする。

「や、やめろ〜!」

圧倒的力の差で、間抜けな抵抗しかできなかった。
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