ピン球と彼女
***

「よーし、到着っと」

「よく頑張ったね、たくちゃん♡」

仲間の一人がニヤケながら俺の髪を掻き乱そうとし、怒りが溜まっていた俺はそれを乱暴に振り払った。

ったく、無理矢理連れてきやがって。

俺が来ても何の役に立たねぇだろーが。

「そうだ、卓也は着替えておいで。ホレ、お前のユニホームとラケット類一式だ」

差し出され、やっと自分が寝間着だということに気付く。

俺、超絶ダサい格好で来たんじゃん……。

プラス、担がれて来るとか、俺の男としてのプライド、壊れるんだが……。

なるべく、人が通らなさそうな道で更衣室まで、行ってみるか。

地図を貰い、更衣室まで向かう。

だが、歩いて人に見られたときの視線が痛い。

「くっそ」

ぐしゃぐしゃ、と寝癖の髪を掻き、走り出す。

あー、俺はこんな予定じゃなかったのに。

家で、またゲームに溺れている、それで良かったのに。

どーしてこんな暑苦しい決戦の場に行かないといけないんだよ!

どーせ、俺が足を引っ張るのに……。

どうして、皆は俺を見捨てない?

こんな奴、俺だったらとっくの前に、見捨ててる。

お人好しばっかりかよ、この部活。

気持ちわり。

嬉しいと申し訳ないが入り混じった感情が視界を奪った。

そのせいで。

「ここ……どこだよ」
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