ピン球と彼女
「すみません、負けてばっかりで……」

むわっとした更衣室で部活仲間に謝る。

俺は殆ど練習に出てないのだから、当然の結果っちゃ結果なんだが。

いくらなんでも、申し訳ない。
 
「全然大丈夫だ!それを思うなら、部活に参加したらどうだ?」

いや、それは……。

ガチャン

扉が開いた瞬間、甲高い声が更衣室を貫いた。

「ご、ごめんなさ、更衣室間違えてっ、どうもすみませんでしたっっ」
 
ドアから一番近い俺は、上半身裸の状態をモロに見られた。

あの女、平凡女と、チビ女じゃねぇか。

初めて、真正面から見たあの女らに、懐かしみを感じた俺は、変なのか。

一体何なんだ、俺に付きまとう、この、抗うことのできないような、強い力は――。

「――也、たくや、卓也!」

頭を小突かれ、我に返る。

「おい、お前、一目惚れか」

何を言ってるんだ、この卓球オタクらは。

「可愛いかったもんな〜、あの子ら」

「惚れるのも無理ないよ」 

「あー、卓球してるところも見てみてぇな」

「頑張れよ、卓也!」

肩をポン、と叩かれ、イラッと苛つきが溜まる。

「そんなんじゃないです。そういうの、俺、興味ないっすから」
 
「またまたー」

「正直になれよ!」

「女なんて、全員同じじゃないですか」

何気なく発した言葉に、更衣室がざわめいた。

「お前……それ絶っっっ対女子の前で言わないほうがいいぞ」

意味が分からない。

「じゃ、お疲れ様です。お先、失礼しますね」

女の意味不明さをそのままに、試合会場を後にした。
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