秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「だったら着る機会を作ればいいよ。俺が用意するから」

彼はドレスを着たトルソーの前に立ち、「これなんか似合いそうだ」と気軽に言う。

シルクのように艶やかな素材のワンピース。淡いピンク地に黒い花柄がプリントされていて上品だ。

しかし、トルソーの足元にあった値札スタンドを見て、私はぎょっと目を見開いた。どうしよう、ゼロが一個多い。いや、なんなら二個多い。とんでもないお店に入ってしまったみたいだ。

「涼晴~……」

「ん? ……おお……」

ちょいちょいと裾を引っ張ってアピールすると、涼晴も足元にある値段を見て驚いたようだ。目をパチクリさせた。

しかし、すぐに穏やかな笑顔を取り戻し、さらりと言う。

「迷うようなら勧めないけれど、茜音が気に入ってくれたならプレゼントするよ」

お、男気~……。

ウン十万のお洋服を見て動揺しないなんてさすがはお医者さま、お給料をたくさんもらっているだけあるなぁと感心してしまった。

「いえ……でも、いい品は金額じゃないから」
< 101 / 205 >

この作品をシェア

pagetop