秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
マンションに着いたあとは、すぐに自宅には帰らず、涼晴の部屋へ。短い時間ではあったけれど、深く深く愛し合い、密度の濃い時間を過ごした。

兄のもとに帰る頃には、二十三時を過ぎていた。私の薬指に光る指輪について、案の定、兄は仰天したけれど「女友達とお揃いで買ったのよ」と説明したら、割とあっさりと納得してくれた。



それから一カ月後、二月の中頃のことだ。

この日もいつも通り夕食をともにして、ソファに座りゴロゴロとじゃれ合っていたのだが、涼晴が急に神妙な顔をして切り出した。

「実は、昔お世話になった教授から、研究留学のオファーが来ていて」

「研究……留学?」

「要するに、海外でスキルを磨かないかってこと」

ドキリとして胸を押さえ、彼の隣で姿勢を正す。彼は今後、海外へ行くつもりなのだろうか。

私に話すくらいだから、きっと前向きに検討しているのだろう。もしかしたら、もう行くと決意しているのかもしれない。

「どれくらいの期間なの?」

「正式には決まってない。だがおそらく、一年か……長くても二年だと思う」

そんなに長い間?と愕然とする。表情が凍り付きそうになるのをなんとか抑え、無理やり笑顔を作った。

彼が必要だと判断したなら、私が寂しいなんて理由で引き留めてはダメだ。
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