秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「涼晴は、留学したいの?」

言葉にしたのは自分のほうなのに、答えが聞きたくなくて胸が痛い。しかし、彼は難しい顔をして首を捻った。

「うーん……どうかな。スキルを磨きたい気持ちはある。けれど、今の病院にはお世話になっているし、今さら日本を離れるのには抵抗があるよ」

それに――と涼晴は続けようとしたけれど、すぐさま「いや、なんでもない」と口を閉ざしてしまった。留学について、なにか気になることでもあるのだろうか。

「いつから?」

「正式には四月から。でも、行くとなったら準備もあるから三月の半ばには渡米しないといけない」

あと約一カ月しかないじゃない。急に別れを突きつけられて愕然としてしまう。

どうかいかないで、そんなことを考えてしまう私はなんてイヤな女なのだろう。応援してあげるのが彼のためなのに。

たとえ二年待たなければならなくとも――別れることになろうとも。

「涼晴がやりたいようにやればいいと思う」

私の言葉に、涼晴は心底困ったような顔でこちらを覗き込む。

「茜音は、聞き分けがいいんだな」

「私のワガママで涼晴を縛り付けたくないもの」

「……そういうところ、好きだけど、寂しいよ」
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