秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
すっかり混乱して、晴馬を毛布ごと抱きかかえて部屋中をうろうろと歩き回った。

晴馬は少しだけ落ち着いたようで、グズることはなくなったけれど、まだまだ呼吸は苦しそうでぐったりしている。

少し休めば治るかしら? それとも救急に向かうべき?

痛いとか、苦しいとか、言葉で言ってもらえればどんなに楽か。

赤ちゃんの世話で一番つらいことと言えば、言葉が交わせないことだろう。顔色を見て、仕草を見て、こちらが勝手に判断することしかできない。

本当はものすごく苦しんでいたらどうしよう。落ち着いて泣き止んだわけじゃなく、ぐったりして意識が朦朧としているんじゃ……。

ふと涼晴の言葉を思い出し、ハッとした。

『呼吸の音がひどくなるようであれば連絡して』

これこそ涼晴の言っていたひどい状態なの? でも、あれからもう一週間も経っているし、今さら頼るのも……。

気は引けるけれど、それどころではないと自分を叱咤した。意地を張っている場合じゃない、晴馬が手遅れになったらどうするんだ。これでもしものことがあったら、それこそ後悔では済まないのだから。

意を決して、私は兄の部屋のドアを叩く。
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