秘密で子育てしていたら、エリート外科医が極上パパになりました
「お兄ちゃん、こんな時間にごめん。涼晴さんの連絡先を知りたいんだけれど」

涼晴の電話番号は、連絡を絶つと決めた二年前に破棄してしまった。番号を知っているのは兄だけだ。

兄は熟睡していたようで、何度か声をかけてやっと気づいてくれた。

「なにかあったのか?」

部屋のドアが開き、目をしょぼしょぼさせた兄が顔を出す。

しかし、晴馬の様子を見せると、その表情と呼吸音ですぐさま異常を察したらしい。急いで枕元の携帯端末を手にとり、アドレス帳をタップした。

「……涼晴? こんな時間に悪い。実は、晴馬の様子がおかしくて」

すると、兄は「ちょっと待って」と言って携帯端末を私に向けた。私の口から直接話したほうがいいと思ったのだろう。

私は晴馬を抱いたまま、兄の持つ携帯端末に耳をあてる。

「あの、茜音です。晴馬の呼吸音が、突然ひどくなって。風邪はもう治ったはずなんですけど……」

すると受話口から、真夜中にしては凛々しい声が聞こえてきた。

『わかった。五分で行く』

まさか即断即決で来てくれるとは思わなくて、慌てて「え? は、はい!」と返事をする。
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